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【番外編】 残留農薬に対する当社の姿勢について

2023/04/05 発行

今年も早いもので四分の一が過ぎ、新年度がスタートいたしました。皆さまの中には親しい方との別れや新しい出会いを経験された方も多数いらっしゃるかと思います。

KOPウェブサイトもおかげ様で開設より半年が経過し、多くの新しい方に会員登録していただいております。そこで今回は丸山珈琲の生豆品質についてより理解を深めていただきたく、残留農薬についてお話したいと思います。
わが国では残留農薬基準について、長年「ネガティブリスト」と呼ばれる制度が設けられてきました。これはそれぞれの農産物の生産に使用される特定の農薬にのみ残留値の基準が設けられ、対象以外の農薬は基準値が設けられてきませんでした。そこで新たに平成18年(2006年)5月29日に施行された「ポジティブリスト制度」では、それぞれの農産物の生産に一般的に使用される農薬以外のものについて(農産物の生産に使用される特定の農薬以外)は一律で0.01ppmという厳しい基準が導入されました。これはどういうことかといいますと、例えば生で食用されるレタスの生産で一般的に使用されるAという農薬があったとします。こちらには0.05ppmという基準が設けられている一方、焙煎という工程を踏まえて飲用されるコーヒー豆では、同じAという農薬を普通は(通常の生産では)使用しないため、基準値0.01ppmという厳しい基準が導入されるケースが発生します。(これは通常の生産で使用されないが故に、厳しい基準が設けられています。)
※ppmは濃度や割合を示す単位で100万分の1を表します。0.01ppmは非常に低い濃度で、100tの作物に1gの農薬が含まれていることを示します。
※基準値については原則ADI(一日摂取許容量)に基づいて設定されます。ADIは動物実験を元に人体が一日に摂取しても健康被害を発生しない許容量を定めております。

輸入食品に対する厚生労働省の対応に話を移しますと、外国から日本に入ってくる多種多様な食品を対象に、食品衛生上の状況について幅広く監視するためのモニタリング検査が実施されています。コーヒー生豆ももちろんその対象であり、検査項目の中には残留農薬も含まれています。このモニタリング検査で法違反が発生すると、その違反案件と同じ生産国の同じ輸入品目(例:ケニア産のコーヒー生豆)について、その後一定期間、検査が強化または検査命令が発出される仕組みになっています。
現在インドネシア産コーヒー豆は輸入時に検査命令が実施されており、その他ケニア産コーヒー豆はモニタリング検査の強化対象となっております。これは過去の検査結果や国の計画に基づいて定められており、検査命令であれば、輸入の全届出検査を行うことになりますし、モニタリング検査であれば国の監視指導計画の対象となります。
これらは過去の検査違反の実例に基づいて定められており、いずれにしても残留農薬のリスクが高いと判断されているため、他の生産国以上に慎重に残留農薬のリスクを考慮する必要があります。

丸山珈琲ではお客様の安全を第一に考慮し、原則として取扱生産国の全銘柄を対象に残留農薬検査を実施し、基準値超過はもちろんのこと、基準値未満の残留農薬が検出された場合でも、検査命令やモニタリング検査の対象国を中心に一定の数値を超過したケースでは買付を見送っております。
それは皆さまに安心安全なコーヒーをお飲みいただきたいからです。一般的なコーヒー販売業者は全日本コーヒー協会が実施する年一回の生産国別の代表サンプルのみで残留農薬検査を行っているケースがほとんどですから、いかに丸山珈琲が残留農薬を重視しているかお分かりいただけるかと思います。また万が一、輸入時の検査によって、残留農薬の基準値超過が発生した場合、輸入者である丸山珈琲はもちろんのこと、輸出者であるエクスポーターや生産者の名前も検査違反として公示されるため、その名前が傷つく恐れがあり、皆さまの信頼を損ないかねません。また検査違反を行ってしまうことで、今後の検査命令やモニタリング検査にも影響を及ぼし、他のコーヒー輸入者にも迷惑をかけることになります。
皆さまにオファーサンプルを試していただいた結果、買付を見送らせていただくケースもございます。もちろん事前に残留農薬検査を実施し、基準値未満のロットのみをご紹介できることに越したことはないのですが、生産国の検査体制が脆弱であったり、検査結果が判明するまでの時間を無駄にすることができなかったりという事情もあります。残留農薬の基準値超過によって買付見送りの判断を行うことは非常に断腸の思いではありますが、皆さまの安全を最優先とする行動の結果とご理解いただければ幸いです。

末筆になりますが、決して農薬は危険なものではありません。病害虫の被害を抑え、コーヒーの収穫・品質を維持する上で欠かせない大事な役割です。どうぞ引き続き丸山珈琲の生豆販売にご期待ください。

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